信濃路散歩...
信州・白馬の不思議霊空間、切久保の観音原
百八十七体の観音様が広場を囲む小さき霊場 
(写真取材03.07/07.12追補)
印象的なおもだった石像個々の紹介はこちら

 

・取材で初めて訪れた20年近く前以来、幾たびかここを訪れているが、行くたびになんか不思議な感覚にとらわれる。どうしてこんなものがここにあるのかといぶかる。 ・私が訪ねる時はたいがい誰もいない、静寂が支配している。作られたのは江戸末期というが、信仰の場といえ、150年もの間、同じ状態が保たれてきたのもおどろきである。
・この広場の様相はとても一枚の写真では表しきれないし、またこの不思議空間から受ける一種霊感みたいなものも表現するのも困難だ。 ・西は西国三十三番、北は板東三十三、南は秩父三十四、東は馬頭観音の合わせて合わせて、百八十七体の観音が広場を囲む。江戸末期、高遠の石工の作と伝えられる。
百体観音とは、西国、坂東、秩父の各所を合わせて百とし、ここで祈ることにより、全てをお参りしたのと同じと考えられた観音。 ・街道筋に寺院の境内に、百体観音は方々にあるが、ここのようにスクエアの周囲に観音を並べたところは他にあるだろうか。広場の空間の持つ意味はなんだろう
・観音原石仏群入口の案内。塩の道、千国街道沿いにあり、白馬村有数の観光スポットでもある。 ・江戸時代から明治時代、村人や多くの旅人がここで険しく辛い行路の安全を祈ったのだろう。

   信州・白馬村のホームページ(観音原も紹介されています)http://www.vill.hakuba.nagano.jp/index.htm

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                        安曇野(あづみの)通信/07.11.15号

 信州白馬の不思議霊空間、切久保の観音原 1
 
 松本から糸魚川へ抜ける国道148号線、白馬村もお隣の小谷村との境もじ
き近い岩岳の信号を西に折れてクルマで5分ほど、昔の塩の道・千国街道沿い
に、私が”信州白馬の不思議霊空間”と呼ぶ、切久保の観音原(かんのんばら)
がある。一辺5、60mほどの芝生の広場を取り囲んで、その四辺に西国・坂
東・秩父の百体観音と馬頭観音など187体が居並んでいる。江戸時代後期、
高遠の石工の作と伝えられている。

 取材ではじめてここを訪れた30年近い前以来、何度もここをたずねている
が、行くたびになんか不思議な感覚にとらわれる。どうしてこんなものがここ
にあるのか、残っているのかともいぶかる。そして、私が訪れたときはたいが
い誰もいない。シーンと静寂が支配している。作られたのは江戸時代後期と
書いたが信仰の場といえ、200年近い間、同じ状態が保たれてきたのがおど
ろきである。雑木林の中にぽっかりあいた空間である。今は広場の裏手など
には農家・民宿・ロッジなども出来ているが、設置された当時はきっと人家な
どは一軒もなかったのだろう。

 西は西国三十三番、北は坂東三十三、南は秩父三十四、東は馬頭観音の
合わせて百八十七体の観音さまが広場を囲む。百体観音の信仰とは、西国、
坂東秩父の各所を合わせて百とし、ここで祈ることにより、全てをお参りした
と同じごりやくがあると考えられたものである。街道筋に寺院の境内に百体
観音は方々にあるが、ここのようにスクエアの周囲に観音像を並べたところ
他にあるだろうか。神聖な場所だったのは間違いないだろうが、広場の空間
の持つ意味はなんだろう。江戸時代から明治時代、そして現代へ、村人の素
朴な信仰の対象であり、多くの旅人がここで休息し、険しく辛い行路の安全無
事を祈ったのだろう。

 朝の日の光を受けて、小さい像が金色に輝く時間帯がいい、また深い霧の中
の観音原もより神秘的である。冬は多く、深い雪の中にすっぽり埋まる。村の
貴重な歴史文化遺産であり、有数な観光スポットでもある。近頃はここで、時
にイベントも行われることもあるようだが、広場脇に売店などは作ってほしく
ない。(つづく)
      


              


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                      安曇野(あづみの)通信/07.12.01号
 
 信州白馬の不思議霊空間、切久保の観音原 2

 
 信州は昔から観音信仰が盛んな土地で、随所に百番観音が立てられ、ミニ霊
場が作られたという。ここ白馬村や小谷村では、松本平や安曇野のような双体
道祖神はあまり見られないが、大町から仁科三湖を経て、佐野坂西国三十三番
観音、十王堂石仏群、観音原から小谷村へ入って前山の百体観音、大別当・小
土山・猫鼻の石仏群など塩の道千国街道沿いを中心に百体観音・馬頭観音等は
ふんだんに見受けられる。

 さて、信州白馬の不思議霊空間、四辺に並ぶ187体の石仏、石仏は皆、丸
彫りでなく浮き彫り、高さは大きいものでも60cmくらいだろうか。高遠石
工の作と伝わる。200年近い風雪を経て来た仏像は一つ一つ見ていると実に
興味深く、またなにか心暖かい。

 千手観音と如意輪観音が多い。申し訳程度に千手が付いているもの、数多く
手が出ていろいろなものを掴んでいるものなど、千手の彫り方も実に多様だ。
背中に羽根を持つまるで天使のような千手観音に惹かれた。あどけない童女の
ような表情で頬杖をする如意輪観音。観音さまはすべて目を閉じていて、おだ
やかな表情。中には下の部分が土で汚れ、またツタや雑草がからんでいるもの
もある。

 立像も座像もある。手を合わせ合掌する仏、片手に睡蓮などの花を持ち、片
手拝みの仏、顔つきの表情もそれぞれが皆違って面白い。幼女のような表情の
もの、ちょっと澄まし顔、ユーモラスを感じさせるもの、四角っぽい顔つき、
艶めかしさを感じるもの、下ぶくれの美人観音、また凛とした感じが伝わって
来るものなどさまざま。中でもなんとも気品あるかわいくも美しい表情の如意
輪観音が強く印象に残った。

 波間にいる二人を千手観音が踏みつけいるような特異な像もあった。200
年近い風雪に洗われたにしては彫りがしっかり残っているものが多いが、よほ
どしっかり固い石材なのだろう。それでもせっかくのいいお顔の目・鼻・口の
部分にコケ・カビが来ているものもあり、これからの保存の課題だろう。

 文章にどれほど書いても石仏・石像のすばらしさをなかなか伝えにくいが、
読者のみなさんも機会があったらぜひ現場を訪れてみてほしい。私もホームペ
ージでも紹介しているので参考にされたい。
                             UNCLE TELL


 
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