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  クラシック炉辺夜話         2008/01/01(毎月1・15日発行)   
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 お正月、こたつでじっくりクラシック(1)
  ベートーヴェンの三大ピアノソナタ/月光・悲愴・熱情

 お盆休みとかこのお正月、サラリーマンにはまとまって休暇がとれるまたと
ない機会である。じっくり落ち着いてクラシックを楽しめるチャンス。北国の
人ならば、外はしんしんと雪、しかし暖房の利いた部屋のソファで、あるいは
伝統のこたつでくつろいでという図もあろう。

  世にベートーヴェンの三大ピアノソナタという。第14番嬰ハ短調「月光」、
第8番ハ短調「悲愴」、第23番ヘ短調「熱情」である。人によって評価は分
かれるだろうが、ベートーヴェンの最も優れたピアノソナタということでもな
いようだ。それならば、私がもっとも好きなピアノ曲、「無人島に持って行く
CD5枚」(夜話2001・5・18号)で紹介した同じベートーヴェンのピ
アノソナタ30番・31番・32番を挙げたい。

 この三大ピアノソナタという言い方が定着したのはいつ頃か知らないが、恐
らく20世紀も後半以降のことだろう。だからもちろん御大のベートーヴェン
はとんと預かり知らないことである。どうやらこれは音楽的な観点というより
は、レコード会社の販売戦略や宣伝効果を意図して始まったもののようである。
すなわち、人目を引きやすいよう表題の付いている曲を三つ選び、「ベートー
ヴェンの三大ピアノソナタ」と銘打ったというわけである。確かにこの三曲は
印象的な魅力ある組み合わせなので、この策はずばりと当たりすっかり定着し
たものであろう。

 第14番嬰ハ短調「月光」、知らない人はいないだろうと思われる名曲である。
”月光”の題名はロマン派詩人のルートヴィヒ・レルシュターブによって後に
付けられたものだが、なんともぴったりなタイトルである。ベートーヴェンが
発表した「幻想曲風ソナタ」のままだったらこうもあまねく知られた曲になら
なかったかもしれない。

 第一楽章など、モーツアルトの第11番のピアノソナタのトルコ行進曲付き
の第三楽章と同様にいつまでもいつまでも聴いていたい旋律。後にアントン・
シントラーに不滅の恋人と目されたジュリエッタ・グイチャルディとのこの曲
にまつわるロマンスは真偽は別として有名なエピソード。1801年ベートー
ヴェン31歳の時の作品だが、作曲当時からこの曲はよほど人気が高かったと
か。

 第8番ハ短調「悲愴」、三つのソナタの中では最も若い時期、20歳代の作
品、1798年頃作曲されたとされる。初期のピアノソナタ群の中の頂点をな
す傑作という。この”悲愴”という題はベートーベン自身が付けたもので、彼
自身が標題を付けたのは、この悲愴と第26番の「告別」のみという。

 第一楽章の冒頭の序奏と続く展開部、一度聴いたら忘れられないと思えるほ
ど実にインパクトが強い。第二楽章はアダージョ・カンタービレ、美しい、瞑
想曲的なといわれる名高い緩徐楽章。悲愴といえば、チャイコフスキーの悲愴
交響曲が想起されるが、感じる悲愴感はチャイコフスキーの方が強いかもしれ
ない。音楽評論家の大木正興さんは、−−その(この曲にあらわれた)悲愴感
はあくまでも若いベートーヴェンのものであり、後半の精神の根底をゆさぶる
ような深刻切実な悲劇的なものにはまだかなり遠い−−としている。

 第23番ヘ短調「熱情」ベートーヴェン中期の大傑作の一つ。「熱情」のネ
ーミングは後にハンブルグの楽譜出版商のクランツによるものだが、一般化し
て今もそれで通っている。1804年から6年、運命交響曲と同じ頃に手がけ
られ、この曲にも運命の有名な動機が登場することも広く知られている。その
運命と同様に、ベートーヴェンの作品の中ではとりわけ激しい音楽であろう。
ほとばしる燃えるような情熱が熱風のように吹きわたり.、第二楽章の穏やか
な安息の後、次の章ではまた嵐のよう激しさが、聴く者を圧倒する。

 この「熱情」には、ベートーヴェンと交友があったラズモフスキー公爵の司
書のビコの妻のマリーにかかるこんな逸話も残っている。(夜話2000.1
0.6号、「他人の奥さんを散歩に誘ったベートーヴェン」)−−1806年
、マリー・ビゴはベートーヴェンから雨の滲みのついたピアノソナタ「熱情」
の草稿を贈られた、というより 雨の中を急いで滞在先のシュレジェンからウ
ィーンに帰りついて、すぐビゴ邸を訪れたベートーヴェンに懇願してそれをも
らったもののようだ。優秀なピアニストであったマリーは雨で汚れた熱情の楽
譜を見て、初見で完全に弾いて見せてベートーヴェンを大いに喜ばせたという。
ベートーヴェンは製版後、約束どおり草稿を彼女に贈った。彼女は大切なメモ
リアルとして終生、宝物のように所持していたという
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