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　 クラシック炉辺夜話      　　　2007/10/15（毎月１・１５日発行)　　　 
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　メンデルスゾーン／交響曲第５番ニ短調「宗教改革」

  ２０代ではじめてこの曲を聴いて以来、メンデルススゾーンの他の交響曲と
比べ評価は今いちのようだが私は好きである。荘重さに満ちる一方美しく流麗
な旋律も多く出現し名曲と思う。音楽評論家桂近乎さんによれば、荘重ではあ
るが弱い作品といわれ、あまり多くは演奏されないとか。

　着想・作曲されたのは多分１８２９年から１８３０年のかけてと思われる。
１８３０年に行われる予定だったプロテスタントの宗教改革３００年祭を記
念するため作曲された。行われる予定だったというのは、結局この行事はカ
トリック派の強硬な反対で頓挫してしまったからである。

　メンデルスゾーンの家系は知られているようにユダヤ系だった。居住して
いた北ドイツ一帯はプロテスタントが多く、父の代にユダヤ教からプロテス
タントに改宗。メンデルスゾーンはプロテスタントとして育ち、バッハの「
マタイ受難曲」を発掘・復興させた功績も大きい。１８３０年６月にベルリ
ンで上記のプロテスタントの宗教改革３００年祭（正確には「信仰告白３０
０年祭」）が開催されることになった。若干２０歳の若い作曲家メンデルス
ゾーンは、その祝典で演奏される曲の作曲を依頼されたのである。

　しかしその３００年記念祭がカトリック教会の反対に遭って中止に追い込
まれ、メンデルスゾーンの曲もひっきょう演奏されずじまいになった。あき
らめ切れないメンデルスゾーンは、２年後の１８３２年、パリ音楽院のオー
ケストラによる演奏会を計画、しかし楽員にはカトリック教徒が多かったた
め強い抵抗に遭い、またもや演奏会は実現不能に陥ってしまった。

　同じ年の１１月、ベルリンでの初演にこぎつけたが賛否両論に分かれ、大
きな物議をかもした。彼が「宗教改革」の名前をつけたのは初演後であるが、
曲中にルターが作詞作曲した『神はわがやぐら』が使われ、プロテスタント
の勝利をたたえる曲だ、とすぐわかるのだいう。爾来メンデルスゾーンは二
度とこの曲を演奏しようとはしなかっといわれる。やはりもうこれ以上宗教
上の争いに巻き込まれたくなかったのであろう。

　今日ではカトリック教徒の多い国でも、特に気にせず演奏されるらしいが
メンデルスゾーンの生きた時代には極めてむずかしい問題だったのである。
どんなすぐれた芸術作品でも宗教問題がからむとなかなか真価を認められな
い典型的な例であるとか。
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