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 クラシック炉辺夜話  2007/06/01(毎月1・15日発行)   

  クラシックの作曲家や作品のエピソードを中心に読みものとしても
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 ブラームスとクララ・シューマン2

 ブラームスとクララ・シューマンとの関係は今までなんとなくプラトニック
なものだと思ってきたが、どうもそうでもないらしい。真相はわからないが「
大作曲家たちの履歴書」(三枝成彰著・中央公論社)によれば、シューマンが
精神病院に入院していた間、ブラームスとクララには肉体関係があったという
のが通説であるという。

 なにしろシューマンが家を離れた後も3年近く、ブラームスはクララとその
こどもたちが住む家に同居していたのである。年の差こそあれ、一見は夫婦然
として暮らしていたのである。家計簿もブラームスが付けていたらしい。まわ
りでは、クララ・シューマンの末っ子のフェリックスはほんとうはブラームス
とクララの子だというような風評も飛び交ったとも。シューマンは、1846
年頃から「家族の記録帳」なるものに妻とセックスとした日には「F」という
記号を付けていたとされ、その記録からもフェリックスはシューマンの子供で
あることはどうやら間違いないらしい。

 別の本には、シューマンはライン川に投身自殺し一命を取り留めたもものそ
のまま精神病院に収容され、ブラームスは残されたクララを励まし、こどたち
家族を献身的に支えた...と書いてあるが...。

 1853年、ブラームスはシューマンを訪ね、妻のクララに才能があり知的
で成熟した美しいい女性への憧れ・魅力と母親に対するような思慕の情を合わ
せて感じるようになった。クララも新しい義理の息子が出来たように思いつつ
も若いブラームスに惹き付けられた。シューマンはすでに病気が進行して正常
さ逸しつつあり、師弟愛と友情が更に深まるには遅かった。こうしてともにシ
ューマンの身を案じつつ二人は恋に落ちたというのは間違いないだろう。

 しかし前々号で述べたとおり、シューマンがなくなり二人が結ばれるのに何
の障害もなくなったのに、前述の「大作曲家たちの履歴書」の三枝成彰氏の言
を借りれば、ブラームスもクララも”通俗的な意味の男女関係を断ち切ってし
まう”のである。そしてそれからのブラームスの喜びは、クララをサポートす
ることや芸術的な意味での交歓においてのみ、見いだされていったのだと。

 三枝成彰氏は続けて言う。−−足枷がなくなってしまうと大手を振って欲望
に流される僕たち現代人に比べると、なんと自己を厳しく律することの出来る
意志の強さを持った人物であったことか。しかし何より僕は、十回も妊娠し八
人もの子供を産んだ女性を生涯慕い続けたという事実に驚くのだ。容姿や華や
かさよりも、真に知性だけで女性を愛することができる人がいるとは...。−−

 ブラームスとの結婚を断念したクララの方もやはり逡巡するような思いはあ
ったろう。ブラームスとアガーテの婚約を知った時は、独り忽然とゲティンゲ
ンを去ったという。
                  UNCLE TELL
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