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  アンクルのクラシック夜話         2005/11/15(毎月1・15日発行)    
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  バルトーク(1881〜1945)/管弦楽のための協奏曲
  
 カメラが上空から俯瞰して、朝日に照らされた地上の光景を写し出している。
古代ギリシャかローマか北アフリカ、それともトロイの都などがあった小アジ
アか。長く続く城郭、その内部の建物群が広がっている。見張り台など、とこ
ろどころに武装し弓矢を持った番兵の姿も小さくさく見える。
 これから画面で展開されるであろう大スペクタル史劇。映画第一の見せ場。
敵味方入れ乱れる野戦とダイナミックな仕掛けの攻城戦など戦闘シーン。政争
と裏切り、美男・美女の俳優がくり広げる激しい恋。そしてドラマは進んで、
最後には悲劇的な結末。
  このバルトークの「管弦楽のための協奏曲」の第一・第三楽章を聴いている
とそんなイメージが私は浮かんでくる。否、そのままアメリカ製スペクタクル
大史劇を描いた映画のバックミュージックに使えるようにも思うのである。第
一楽章と第三楽章の最初の出だしなど、明けて行く空とはうらはらにドラマの
交錯する筋立て、最後のカタストロフィー的結末を不気味にも暗示するかのよ
う。
 そのような意味では通俗的とも取られ、マニアにとっては、バルトークらし
さが薄れた作品と受け止める向きもあるとか。
 1943年、アメリカで作曲された。死の2年前である。バルトークは19
40年10月、母の死を契機にナチスの魔の手が身辺に及ぶ前にアメリカに亡
命した。しかしすでにヨーロッパで作曲家としての名声を確立していたにもか
かわらず、よくいわれるようにアメリカの社会は彼に冷たく、生活は悲惨を極
めた。その上、病魔にも冒され、この曲の作曲を依頼された時は重病の床にあ
った。
 この曲は、当時のボストン公共楽団の指揮者クーセヴッキーが自身の誕生祝
いとボストン交響楽団の指揮者就任20周年を記念してバルトークに委嘱した
もの。音楽評論家・志鳥栄八郎さんの著作「クラシック名曲ものがたり集成」
(講談社文庫)によれば、それは表向きで、バルトークの窮状を救おうと同じ
ハンガリー人の指揮者のライナーとバイオリン奏者のシゲティなどが中心にな
って彼に救いの手を差し伸べた、すなわち作曲依頼に名を借りた経済援助だっ
たという。
 友人たちが見るところ、彼にはもはや大作を仕上げる余力は残っていないと
思われたが、思わぬ作曲依頼に感激したこともあるのだろう。バルトークは病
気もなんのその、熱に浮かされたように、信じられないほどの早さで作品を仕
上げるのである。その年の8月15日に作曲に着手し、もう10月8日には書
き上げたという。
 初演は約1年後、1944年12月1日、ボストン交響楽団の演奏会でクー
セヴィッキーの指揮で行われ、大成功を収めた。
 この曲は、代表作のひとつ《弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽》と
一緒にカップリングされていることが多い。私のお気に入りのCDは、フリッ
ツ・ライナー指揮シカゴ交響楽団のもの。
                  UNCLE TELL
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