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  アンクルのクラシック夜話         2005/08/15(毎月1・15日発行)    
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 月光の元で写譜、バッハ六ヶ月の艱難辛苦

 ヨハン・セバスチャン・バッハ10歳の1695年、父アンプロジウスが他界、
その前年には母、エリザベートが亡くなっていたので、バッハの家は離散を余儀
なくされた。セバスチャンは3歳上の兄、ヨハン・ヤーコブ(1682〜172
2)と一緒に、オールドルフに住んでいた長兄のヨハン・クリストフ(1671
〜1721)に引き取られた。
 長兄のヨハン・クリストフは、ヨハン・パッヘルベル(1653〜1706)
の元で修業を積んだ既に優秀な音楽家であり、、オールドルフの町の教会オルガ
ニストを務めていた。バッハはこの兄の元でクラヴィーアの演奏技術の基礎を学
んだようである。
 バッハは既に父の存命中、父からバイオリンを教えて貰っていたが、この長兄
は、パッヘルベルの高弟であっただけに、相当卓越した技量を持っていたが、あ
まり積極的にセバスチャンに教えなかったようである。この種の話の常で真偽の
ほどはわからないが、それどころかセバスチャンの急速な進歩を喜ばず、知識や
技術の著しいレベルアップにつながるような教養を与えなかったともいわれる。
またその頃の大家の作曲したものもなるべく弟の手に渡らぬよう注意を払ってい
たとも。
 セバスチャンの才能はそんな兄のいわば邪険な扱いもにめげず、あらゆる機会
を捉えて一度目にしたもの、耳にしたものはすぐ暗記・吸収し、先生としての兄
より与えられるものよりは、ずっと程度の高い楽曲を学ぶことのみ心がけた。
 その頃、セバスチャンは、兄の師パッヘルベルをはじめ、フローベルガー、ブ
ックスフーテ、ケルルなど南ドイツ楽派の巨匠たちのクラヴィーア曲集を兄が所
有してることを知り、何度も見せてくれるように頼んだが、頑としてして拒むば
かりか、鍵のかかる戸棚にしまい込んでしまった。
 そこで一計を案じた。その戸棚は荒い格子戸で仕切られている構造なので、子
供の彼の細い手なら丸めればなんとか入りそうだった。日中ではむろん、兄に見
つかる恐れがあるので、毎晩、家の者がみな寝静まるのを待って、格子戸越に小
さな手を入れ、紙綴じだった曲集を中で丸めて取り出し、月の光の元で六ヶ月も
かかってついに書き写してしまったのである。その熱心さ、情熱はまさに驚嘆す
べきものである。
 しかし、どこまでもつかない不幸なセバスチャンであった。写譜が完成した喜
びに有頂天になっていたのだろうか、ついうっかりクラヴィーアを弾いてみたの
だろうか、たちまち兄に知られてしまい、写譜した曲集も取り上げられてしまっ
たのである。この曲集、兄のクリストフが1721年に世を去るまで、バッハの
元に戻らなかったとも、一説には見つかってすぐ眼前で焼かれてしまったともい
う。バッハの嘆きと悲しみはいかばかりのものだったろう。
 「バッハ」(カラー版・作曲者の生涯・新潮文庫)の著者、樋口隆一さんは言
う。−−それは、たいしたことではない。これだけの緊張と集中力を傾けた努力
そのものが、バッハを類まれな巨匠へ育てたに違いないからである。と−−。
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