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アンクルのクラシック夜話 2004/06/15（毎月１･１５日発行)
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クラシックの音楽家や作品のエピソードを中心に読みものとしても
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レスピーギのローマの松
高校生だった娘が、吹奏楽団でサキソフォーンを吹いていて、家で一生懸命
練習している曲の楽譜を見たら、レスピーギの「ローマの松」だった、−−へ
え、こんな曲が演目に取り上げられるのかと、ちょっと意外にも思った印象が
残っている。
ご存じレスピーギの交響詩、ローマの三部作、ローマの噴水・ローマの祭り
とともに親しまれている。といっても２０世紀の作品であり、いわゆるオース
ドックスな学校で習った音楽史の作品からははずれるものかもしれない。
オットリーノ・レスピーギは、１８７９年イタリアはボローニャ生まれ、１
９３６年に５６歳で生涯を終えた作曲家。ローマの歴史と伝統の熱烈な賛美者
だったという。
経歴が面白い。１８９９年、２０歳で地元のボローニャ音楽院を卒業すると
、今度はロシアへ行き、リムスキー・コルサノフの門下に入り作曲を学んだ。
リムスキー・コルサノフは当時、管弦楽法の大家として知られ、その華麗なオ
ーケストラレーションの秘密をじゅうぶんに会得して帰国したのである。
その後、ピアノ五重奏団でビオラを弾いたりもしたが、１９０８年、楽団の
解散後は作曲と教育の道に。１９１３年ローマのサンタ・チェチリアーノ音楽
院の教授に迎えられ、後年校長まで昇進している。
出世作になったのは、１９１６年、３７歳のときの「ローマの噴水」。ロー
マには、コロセオ（円形劇場）とかカラカラの大浴場など、その栄光の歴史を
偲ばせる遺跡が市内のいたるところに残っている。レスピーギのこのローマ三
部作は古都ローマの栄光を、噴水、松、祭りという三つの角度からとらえて描
いたものという。
最初の「ローマの噴水」から８年後、レスピーギ４５歳、三部作の二作目「
ローマの松」が世に出た。三部作の中でも一番、今ではレスピーギの最高傑作
とも評価されている曲である。一作目の「ローマの噴水」では、まだ未消化と
も評されたオーケストレーション、内容も一段と充実し、グレゴリー聖歌の旋
律を採り入れるなど、作曲技法の上でも格段の進歩があったとされる。タイト
ルが”松”というのも日本人にはとりわけ親しみがもてる。
《ローマの松》には、ローマ市内の「ボルゲーゼ荘園の松」「カタコンブ
付近の松」「ジャニコロの松」「アッピア街道の松」という四カ所の松が描か
れている。グレゴリー聖歌の旋律が使われているのは、第２曲の「カタコンブ
の松」。としても松そのものを単に音画風に描いたものではない。いずれにし
ても古今東西、松が曲のテーマになっている作品など他にほとんどないのでは。
３曲目の「ジャニコロの松」の終わり近くには、ナイチンゲール（夜鶯）が
鳴き出すが、ここはレコードを使うよう譜面に指定されているというのも話題
になり、この作品を有名にしたと、今は故人の音楽評論家、太田黒元雄さんの
「名曲をめぐる」（音楽之友社刊）で紹介されている。
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