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  アンクルのクラシック夜話         2004/05/15(毎月1・15日発行)    
                                         uncletell@cool.ne.jp 
   
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  チャイコスキーとアメリカとくるみ割り人形
  
 1891年春、日本では明治21年、チャイコフスキーは、ニューヨークは
カーネギーホールのこけら落としに招待され、生まれて初めてアメリカの地を
踏んだ。なお、この年の翌年には、ドボルザークがアメリカに渡っている。
 ニューヨーク、ワシントン、フィラディルフィア、ボストンなど各地のオー
ケストラを客演指揮し、熱狂的な歓迎を受けた。アメリカ滞在中、自分のチャ
イコフスキーという名前がヨーロッパでより数倍も知れ渡っていると実感し驚
いたという。そして新大陸アメリカで見聞したことはまさに新鮮で驚きの連続
であった。 
 しかし、浮き立つようば朗らかな気分にはなれず、ホテルで一人になるとよ
く涙を流していたと評伝などでは紹介されている。前年不幸で不可解な別れを
をしたフォン・メック夫人のことが大きな重りになっていたのだろう。(この
チャイコフスキーとフォン・メック夫人との愛と友情と挫折については、夜話
01.06.15号から4回に分けて掲載済)すなわち、前年の1890年の
秋、13年間に渡って続いて来たフィン・メック夫人との文通が、夫人からの
一方的な通告で打ち切りになり、同時に夫人からの援助の送金も途絶えたので
ある。経済的打撃もさることながら、それ以上に心の痛手が大きかった。
 帰国後、依頼を受け作曲途中だった、オペラ「ヨランタ」とバレー音楽「く
るみ割り人形」の仕上げにかかった。この二つの作品は翌1892年の暮れに
同時に初演され、評判はまずまずだった。
 ところで初演に先立つ同年の春に、バレー音楽「くるみ割人形」の組曲が発
表・演奏されている。これはペテルブルグで催されたロシア音楽協会の演奏会
のために作られたものだが、今はバレー音楽そのものと共に親しまれている。
実は第一組曲とは別に第二組曲というのもあるらしいが、滅多に演奏されるこ
とはないようだ。もっともこの第2組曲、誰が編成したかわからないが、第1
組曲に入っていない曲で構成されているという。
 クララはクリスマスにもらったくるみ割人形を壊してしまい,深い悲しみに
包まれる。夢の中で,人形は王子さまになり,彼女をお菓子の世界に連れて行
くというストーリーのバレー音楽「くるみ割人形」。曲は上述したような時代
アメリカ旅行というエポック、しかし憂愁な胸の内が続く中で作曲された曲で
あるが、そんなことは感じさせない楽しい曲である。
                   UNCLE TELL
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