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  クラシック炉辺夜話      2006/09/15(毎月1・15日発行)    
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  アルバン・ベルク(1885〜1935)のバイオリン協奏曲
  
 以前、私の時々行くスナックでバックにショスタコービッチのピアノ五重奏
曲が流れていてびっくりしたなんて紹介したことがあったが(03.08.0
1号)、それとは別の近くの喫茶スナック、ママはサイトウキネンのボランテ
アを長年やっていて、クラシックにもちょっとうるさい。そのサイトウキネン
で武満徹の曲を聴いたらしい。武満の曲はどうも暗いという。

 「そりゃそうだよ、モーツアルトやロマン派の音楽のように耳障りのいい、
心地良い音楽というわけにいかないさ...、なにしろ現代の曲だからね。」と
私。「斉藤純という評論家は、現代音楽のイメージをトゲトゲギスギスなんて
言ってるよ」「武満徹の曲、有名なノヴェンバー・ステップスなんか、私には
とっつきが良かったけどね。」

 話題は、以前サイトウキネンがやったオペラ、ベルクの「ヴォツエック」を
彼女も見たというのでそちらに移って行った。
 確かに、彼女のいうように1920年30年以降、現代の曲は概して暗いか
もしれないし、トゲトゲギスギスもしているのだろう。「無人島へ持っていく
CD5枚」(04.05.18号)で紹介した、バルトークのまた、ショスタ
コービッチの弦楽四重奏曲だって、ベートーベンのものと並び立つ金字塔とい
う評価もあるようだが、とても素直に心癒される曲とはいえまい。やはりそこ
は20世紀の作品である。20世紀のオペラとして評価が高い「ヴォツエック」
だってオペラというカタチを取っているけれど、曲自体は現代の曲そのもの。
モーツアルトやイタリアオペラを聴き慣れた耳には最初は驚愕ものだろう。 

 標題のベルクのバイオリン協奏曲、評論家の吉松隆さんは、”十二音技法・
無調で書かれたもっとも美しい唯一無比のバイオリン協奏曲”と言っているが、
普通の人が美しいと感じるまでには相当の時間を要するのではないか。シェー
ンベルグが創始したという十二音技法・無調というのも、解説を読んでもどう
もさっぱりわからないが。吉松隆さんはまた、”十二音及び無調で書かれてい
るものの、そのいくぶん非人間的で無機的な響きは逆に死の苦しさと残された
ものの虚無感を描くには最適で、甘く歌われるロマン派の協奏曲とは一線を画
した、ギリギリと心をえぐるような音楽が展開する。”と述べている。このこ
とからも、いかに”現代的”な曲か想像がつくというもの。

  若い頃、マーラーの音楽に心酔し、個人的にもなにかとめんどうを見てもら
い親しくマーラー家に出入りしていたというベルク、マーラーの死後、未亡人
になったアルマ・マリアが建築家のグロビウスと再婚しても行き来していた。
グロビウス・マリア夫妻の間に生まれた娘のマノンもとても可愛がっていた。
美しく成長したマノンであったが、17歳で小児麻痺にかかり、中枢神経をお
かされ発病からわずか一年あまり、18歳でこの世を去ってしまったのである。

 ちょうどその頃、ベルク50歳近く、オペラ「ルル」のオーケストラレーシ
ョンにかかっていたが、諸事情で中断していた。そこへアメリカのルイズ・ク
ラスナーというバイオリンニストからバイオリン協奏曲の依頼を受け、気分一
新作曲を始めようと形式・構成などを思案していた矢先、マノン・グロビウス
の訃報に接したのである。ベルクは大きなショックを受けた。彼女を悼む気持
ちはニ楽章のバイオリン協奏曲となり、1935年8月に完成した。総譜には
「ある天使の思い出のために」と書かれた。初演は翌1936年4月、依頼者
のクラスナーの独奏、ヘルマン・シェルヘンという指揮者の元、バルセロナで
行われた。しかし作曲者ベルクはこれを聴くことが出来なかった、もうこの世
にはいなかったのである。

 このバイオリン協奏曲作曲中に背中に悪性の腫瘍が出来、入院手術もしたが
病状が急速に進み12月末には返らぬ人となった。敗血症とも。バイオリン協
奏曲は慈しんだマノンへのレクイエムであると同時に自らへのレクイエムにな
ったのである。
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