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  アンクルのクラシック夜話      2006/04/01(毎月1・15日発行)    
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  ベートーベンの出自3
  
 ベートーベンの伝記やその出自などにふれた本によると、同名の祖父ルー
ヴィッヒが若い頃にフランドル地方(現在・ベルギー西南部)から出てきて
ボンの宮廷の歌手になったと書いてある。更にベートーベンの祖先は、今日
では15世紀まで遡って知られるようになっているとか。
 祖父ルートヴィッヒ(1712〜1773)はブリュッセル北方、メレヘ
ンのパン屋の三男。1732年20歳の時、故郷を出奔。母親(ベートーベ
ンから見れば曾祖母)との不和からいう説もある。父系はオランダ人だった
が母はワロン人(ベルギー南部に住むラテン系言語を使用するケルト系住民)
とされる。なお真偽のほどはわからないが、ベートーベンの家系にはスペイ
ン人の血も流れていると書いた本もあった。
 よほど才能と運があったのだろう。翌年には、ケルン選帝候クレーメンス
・アウグストの宮廷楽団のバス歌手としてボンの居城に伺候した。次の選帝
候マクシミリアン・フリードリッヒの時代の1761年、宮廷楽長に任命さ
れている。多くの人が認める有能な音楽家だったのである。
 ルートヴッヒはボンに着いた半年後にはもう結婚していて、三人の子供を
もうけている。妻は、マリア・ヨゼフィ、酒商の娘だったらしい。そのため
か後年、アルコール中毒に。ケルンの尼僧院に収容されそこで没している。
三人の子供の内、二人は早世し、成人したのはベートーベンの父となるヨー
ハンだけだった。また、ルートヴィッヒは宮廷の歌手のかたわら、ワイン販
売や農民への金貸しなども営み、けっこう裕福だったようである。
 息子のヨーハンは、父親ゆずりの美声の持ち主で、12歳の頃から宮廷楽
団で歌手をつとめたり、バイオリンを弾いたりした。16歳頃には無給だっ
たが正規の宮廷楽士になっている。27歳のときに、21歳の寡婦マリア・
マグダレーナ・ケフェリヒと結婚。これがすでに宮廷楽長までになっていた
ルートヴィッヒには気に入らなかった。強く反対したらしい。よりによって
未亡人と、という思いだったろう。ヨーハン自身ももう宮廷楽団の若い歌手
を指導する立場までになっており、またボンの貴族の子弟に音楽教育を授け
るほどの実力と能力を示していたのである。ボンの良家の娘との結婚を当然
のことと考えていたのである。なお、マリア・マグダレーナは再婚だったが、
選帝候の宮廷料理長の娘で、家柄がそう悪いということはない。
 マリア・マグダレーナは情の深い、心優しい女性で、教養こそは欠けてい
たが物静かで品の良い女性であったという。「彼女は私にとって本当によい
愛すべき母親であり、私の最良の友だちでした」とベートベンは彼女の死後、
手紙の中で書いている。
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