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  アンクルのクラシック夜話36      2001/03/30(毎週金曜日発行)   
                       uncletell@lycos.ne.jp
 
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 乱雑・不潔の極め付き天才、ベートーベン
 
 前回は不器用な天才ベートーベンの話を紹介したが、彼はまた乱雑の極め付
き天才でもあったようだ。ベートーベンにとって乱雑というよりは、部屋がい
くら散らかっていようが、その身なりと同じで意に介さず、気にも留めず平気
だったというところか。もっとも若く、社交に気を使っていたころは多少とも
違っていたかもしれないが。
 ベートーベンの部屋の様子も、例によって、そこを訪れた多くの人の証言が
残っていて想像に難くない。自分の書いた書き付けや楽譜の1ページを捜すた
めに、丸半日や一日部屋の中をすごく不機嫌になってかき回し捜すなぞ、日常
茶飯事。
 ベートーベンを訪ねた人たちの大方の感想をまとめると、彼の居室の中の異
常な「不整頓・乱雑」と「不潔さ」とは、そのだれもが一致した点だという。
 ベートーベンは当代随一な大音楽家として、もちろん全ヨーロッパに鳴り響
いていたが、その彼を慕って、訪れる人はひきも切らず。皆、その高名に恥じ
ない立派な家に住んでいると思ったとしても不思議ではない。それがさんざん
探し回った挙げ句、陽の当たりも悪い裏通りの乾物屋の主人から「ベートーベ
ンならば、隣の家の三階に住んでいる」と聞かされ耳を疑う。
 そして、大芸術家の住居にはおよそ似つかわしくない狭い階段を昇って三階
までたどり着き、一間だけの「ベートーベンの家」の内部を見回した時、驚き
と失望・落胆はまさに決定的になるのである。
 近衛秀麿著「ベートーベンの人間像」(音楽乃友社刊)には、そんな有り様
が次のような具合に紹介されている。
 −−−時には、部屋一面が大きな水たまりになっており(ベートーベンは毎
日全身を水で洗った)、洗い残しの汚れものは一部床の上に放ってあり、ピア
ノの上、インクのしみだらけのテーブルや、ガタガタのイス、譜面台の上まで、
ところ狭しと脱ぎ捨てた衣類が投げつけられ、読みかけの本、新作の下書き、
校正刷りなどの外、メトロノームや不細工な補聴器、眼鏡などまで、皿の上に
残った前日の食事の残りと一緒に部屋中に散らかっている。書きかけの楽譜も、
部屋のいたるところに散らばっている。空のトランクやカバンも無造作に壁際
に立てかけてあり、ベッドの上に洗濯物、下着が山のように積んである..。
−−−
 信じがたいがこんな話しもある。ベートーベンの最大の力作として有名な「
ミサ・ソレニムス」、清書を終わった全曲の総譜とその下書きを、彼はなんと
十四日間も探し抜いたというのである。それは、台所の隅の鍋の下敷きになっ
ていて、もう少しのことで、上から一枚一枚家政婦の食料買い出しの包み紙に
使われる危ない一歩手前だったというのである。
 ベートーベンはまた非常にしばしば引っ越しをしたが、半数以上は家主から
追い出されたか、喧嘩して自ら飛び出したのが真相のようだ。
                     UNCLE TELL 
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 ベートーベンは生前のシューベルトとは違って、ヨーロッパじゅうに名が聞
こえていた当代一の音楽家、収入もそれなりにあった筈だが(ベートーベンは
モーツアルトと違って、決して貧乏なんかじゃなかったと考えられる)、邸宅
を持とうとすれば、持てたと思うのだが、そういう発想がまるでない。もっと
もその頃の都市の庶民は、みなアパートメント暮らしのようだったようでもあ
るが。家を持っていたのは貴族か大商家か、近郊の農民だけだったのではと思
われる。 
                         
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 ・#31・ハイドンの頭蓋骨の長き放浪
 
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 ・#10・給食の音楽とお掃除の音楽
 ・#09・鼻ぺちゃ先生とシューベルト
 ・#08・ベートーベンの筆談帳より
 ・#07・ベートーベンの「不滅の恋人への手紙」より(3)
 ・#06・ベートーベンの「不滅の恋人への手紙」より(2)
 
 ・#05・ベートーベンの「不滅の恋人への手紙」より(1)
 ・#04・バッハ「トッカータとフーガ」二短調
 ・#03・「ウイリアム・テル序曲」「セヴィリアの理髪師序曲」とロッシーニ
 ・#02・寅さんと島崎藤村とドビュッシー
 ・#01・バッハ「ゴールドベルグ変奏曲」
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