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アンクルのクラシック夜話20 2000/12/08(毎週金曜日発行)
uncletell@lycos.ne.jp
クラシックの音楽家や作品のエピソードを中心に読みものとしても
ポピュラーな話題をお送りします
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チャイコフスキー(1840−1893)とドビュッシ−(1862−1918)
チャイコフスキーとドビュッシーとが面識があったというわけではない。年
齢は20年以上も離れているし、チャイコフスキーはロシア、ドビュッシーは
フランス。
しかし、ドビュッシーはチャイコフスキーのことはよく知っていた。という
より、ある人を介して密接につながっていたという方がいい。なにしろ、ドビ
ュッシーは若いある時期、チャイコフスキーの作りたての曲を演奏して歩いて
いたのである。
チャイコフスキーには、大富豪の未亡人でフォン・メック夫人というパトロ
ンがいたことは良く知られている。この二人の交際は1876年、チャイコフ
スキー36歳のとき、ある音楽家を通じてメック夫人からピアノのための小品
の作曲を依頼されたことから始まった。日に3通も4通もの手紙が行き交った
こともあるというが、文通だけで二人は生涯、直接会うことはなかったという
のである。また、メック夫人の方はそれを条件にチャイコフスキーに多額の年
金を与えたとも。チャイコフスキーの音楽をこよなく愛したフォン・メック夫
人は、以来14年に渡って、助言し、元気づけ援助を惜しまなかったのである。
ドビュッシーはこのフォン・メック夫人お抱え音楽家の一人だった。すなわ
ちフォン・メック夫人は、家中にピアノ三重奏団を持っていて、ドビュッシー
はそのピアノを受け持っていたのである。夏の三、四ケ月の間、フォン・メッ
ク夫人とその三重奏団は、イタリア、スイス、ロシアとヨーロッパ各地へ演奏
旅行を行った。大富豪夫人のおかげで若い多感な時期、ドビュッシーは得難い
体験と見聞をしたのである。
その演奏ではもちろん出来たてのチャイコフスキーの作品が大きく取り上げ
られた。先に"ロマンチック&センチメンタルクラシック選”で紹介したピアノ
三重奏曲”偉大な芸術家の思い出のために”も、友人のニコラス・ルビンシュ
タインを記念するためと、一方ではピアノ三重奏曲の愛好者だったフォン・メ
ック夫人を喜ばすということもあったようである。
何故、ドビュッシーが選ばれたかといえば、メック夫人はピアノの伴奏が上
手で視奏に長じ、室内楽がやれる音楽家を紹介してほしいということでパリ音
楽院に申し込んだ。決して、ピアノの名手という要求ではなかったという。パ
リ音楽院のマルモンテルという教授のあっせんでドビュッシーに白羽の矢が
ったのである。
ドビュッシーはチャイコフスキーのオーケストラの総譜をなんなく弾きこな
したようで、その種の読譜にはすばらしい才能があったらしい。
ところでフォン・メック夫人には娘がいた。最初にドビュッシーがメック夫
人の家に来たときは13歳の、ただかわいい少女だった。しかし2年がたって
15歳の娘ソーニャは、ちょっぴり色気も交え魅力たっぷりの娘になっていた。
しかもこの娘ソーニャは若い教師のドビュッシーに本気で惚れ込んでいるそぶ
りを見せた。
それでのぼせ上がったのかわからないがドビュッシーは、メック夫人にソー
ニャをほしいと願い出た。メック夫人はその日のうちに、ドビュッシーを首に
して追い出してしまった。1882年、ドビュッシー20歳の頃である。高い
報酬とこの上ない願ってもないような待遇が瞬時にふいになってしまったので
ある。
この前後に、ドビュッシーはパリで出入りしていたサロンの家の14歳も年
上の女主人マリー・ブランシュ・ヴァニエに猛烈に熱を上げるなど、彼の女性
遍歴は始まったばかりだった。後年、捨てた女がピストル自殺などを企てる、
パリを騒がせるスキャンダルなども起こすのだが、それはまた別稿で。
写真で見るかぎり、ナジデタ・フォン・メックもマリー・ブランシュ・ヴァ
ニエもかなりの美人である。 UNCLE TELL
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「アンクルのクラシック夜話」もおかげさまで20話になりました。読者の
方も増え870名近くになっています。どうもありがとうございます。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
#20・チャイコフスキーとドビュッシー
#19・ロマンチック&センチメンタルクラシック選(4)
#18・ロマンチック&センチメンタルクラシック選(3)
#17・ロマンチック&センチメンタルクラシック選(2)
#16・ロマンチック&センチメンタルクラシック選(1)
#15・グレゴリー聖歌とジュリー・ロンドン
#14・クロイツエル・ソナタ
#13・当世クラシック人気作曲家ベスト30
#12・ラ・フォリア物語
#11・他人の奥さんを散歩に誘ったベートーベン
#10・給食の音楽とお掃除の音楽
#09・鼻ぺちゃ先生とシューベルト
#08・ベートーベンの筆談帳より
#07・ベートーベンの「不滅の恋人への手紙」より(3)
#06・ベートーベンの「不滅の恋人への手紙」より(2)
#05・ベートーベンの「不滅の恋人への手紙」より(1)
#04・バッハ「トッカータとフーガ」二短調
#03・「ウイリアム・テル序曲」「セヴィリアの理髪師序曲」とロッシーニ
#02・寅さんと島崎藤村とドビュッシー
#01・バッハ「ゴールドベルグ変奏曲」
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私は、もうひとつ「千曲川通信」というエッセイメールマガジンを出してい
ます。こちらもぜひ読者になっていただければうれしく思います。「千曲川通
信」とローカルな名前をつけてしまいましたが、話題はあれやこれや、少しで
も琴線にふれるものをと...、毎週水曜日発行しています。
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玉と拾はむ”(万葉集)
みすずかる信濃は、千曲川河畔から発信、なつかしきたべものたち、野の花
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とルポ、そしてモノローグ、ノスタルジーとロマンと安らぎと...
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「千曲川通信」バックナンバーのタイトルを紹介します。
http://www.mag2.com/m/0000038597.htm
#23・江戸時代の伝統を受け継ぐ上田紬
#22・りんごの密の秘密
#21・ちょっとした冒険心と..
#20・手食の世界
#19・信州・蜂の子物語
#18・チャンス
#17・粉末ジュース追想
#16・信州・修那羅峠の小さき神々
#15・信濃の鉄道今昔
#14・なーんだ、バナナか物語
#13・昔、渋谷・道玄坂に古本屋があった...
#12・アイスキャンデーの夏
#11・SLとアイスクリーム
#10・県歌「信濃の国」物語2
#09・県歌「信濃の国」物語1
#08・モーツアルトの死とベートーベンの死
#07・甲斐・越後VS信濃と長沼城
#06・北信濃の古城2 栗田城と栗田氏
#05・北信濃の古城1 夜交(よませ)氏の末裔
#04・モンテッソーリ
#03・たまご哀歌
#02・夏、二題、合歓(ねむ)の木街道のこと
#01・野辺や路傍の石仏に親しむ
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