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  UNCLE'S                 uncletell@lycos.ne.jp
      「千曲川通信」#16
                       2000/10/18(毎週水曜日発行)
 ”信濃なる千曲の川の細石(さざれいし)も  君し踏みてば
  玉と拾はむ”(万葉集)
 みすずかる信濃は、千曲川河畔から発信、なつかしきたべものたち、野の花
 と果実、石仏、風、植物誌、モーツアルト、ベートーベン、温泉、歴史散歩
 とルポ、そしてモノローグ、ノスタルジーとロマンと安らぎと...
 心から心へのエッセイメールマガジンをめざします... 
  http://park.millto.net/~uncletell/
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 「アンクルの信濃路散歩」より  信州・修那羅峠の小さき神々
 
 ”百年前の土俗信仰の熱気と庶民の吐息が聞こえそう..."
 
 国道143号線沿い、信州は上田市の西方、小県(チイサガタ)郡の青木村
から東筑摩郡の坂井村へ抜ける山道の最高所に位置する修那羅峠。この峠の近
くに、近年人気を集めている「修那羅の石仏群」がある。
 石仏群は、正式には「修那羅山安宮神社」と呼ばれる神社の境内にあり、地
元の人々は「ショナラさま」「ショナラさん」と親しみをこめて呼ぶ。不思議
な名前なので、語源がよく問題にされ、アイヌ語説、朝鮮語説などいろいろあ
るが、この山を開いた修験者大天武に由来するところが大きいようだ。
 現在の新潟県妙高村大鹿の生まれという修那羅大天武(望月留次郎)は、若
年の頃から長年、全国の修験道場を遍歴した後、幕末から明治初期にかけてこ
こに住み着き数々の霊験を示して、近隣の村人の信仰を集めた。
 上田・佐久や上水内(カミミノチ)郡・長野方面など、主に東北信の人々や
地元の東筑摩郡北部の農民が多く参拝に訪れた。里の村人大天武を生前「あさ
かのおてんごさん」と呼び親しんだという。
 願いをかなえてもらったお礼に、願ばたきとして奉納した石神・石仏が積も
り積もって七〜八○○体もの数に。写真(別途リンク参照)のような像のほか
文字碑が多く石詞(せきし)や自然石も目だつ。
 修那羅の石神仏の特徴は、個人の祈願によって集まったものがほとんどとい
う。意味のよくわからない神仏名・神仏像も多い。縁結び・子宝・安産など子
育てにつながるもの、病気平癒のものが目だち、また、金神・ササヤキ明神な
どよそではみられない特殊なものもいくつか登場している。
 石神石仏は、ほとんど三〜四○センチ程度の小さなもの。これは人の背に乗
せて、ふもとから運び上げたためか。儀軌(ぎき−−石仏等を刻む上での一定
の規範)からはずれた特異な像、異形の神が数多い。
 信州石造物研究会の金子文平さんは、「素人の彫刻が多かったということも
考えられるが、もう一つ儀軌を積極的に無視してやろう、という気慨もあった
のではないかと思われる。従来の造形にとらわれない、また村落共同体の規制
下にない自由な発想・造形が修那羅の石神仏像に投影されているように思う。
」と、その著書の中で述べている。
 修那羅には、土俗信仰のすべてがあるともいわれる。心にしみ入るよう美し
い像・稚拙ながらほのぼのとした気分にさせてくれる姿、そして恐ろしさの中
にもユーモラスな情緒をもつ像・・・。人によっていろいろな見方が出来るし
自分の気にいった像を心ゆくまで鑑賞したり、同じ願いをこめ祈ることもでき
る。修那羅が多くの人を引きつけてやまないのはそんな理由によるのだろう。
                      UNCLE TELL
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 ”修那羅”の名が石仏より、1980年3月に起きた長野市内の信用金庫の
職員、寺沢由美子さん殺人事件(富山県・長野県にまたがる女高生・OL連続
誘拐殺人事件−−当初 宮崎知子と北野宏の共同犯行と思われていたが、北野
被告は後に無罪を獲得)−−の方で全国的に有名になってしまったことはまこ
とに残念なことである。
 事件が修那羅峠で起きたわけでもないのに、ただ現場が近いということで事
件の代名詞にされている。
 ある年の秋、私はこの取材のため朝の10時ころから午後は4時頃まで、安
宮神社の起伏の多い境内の中をあっちへいったり、こっちへきたりし取材・写
真をとっていた。
 おおかたの像をカメラに納めたのだが、小さい像でもこれだけ集まれば壮観
といわざる得ない。取材前に買った参考書の写真と見比べながら、フンフン、
ホー、これがそうかと感心とも嘆息ともつかぬ呈で眺め入っていたものである。
 修那羅の石像・石仏群は、いうにいわれぬ魅力に満ちたもので、県内外から
訪れる人も近年増えている。雑誌などによく紹介されていて有名な幼い姉弟が
手をとりあっているかわいい姉弟像や、子育て地蔵(左手で子を抱き片手拝み
まんまる顔のお地蔵さん)など、じっと見ているとほんとう心が洗われるよう。
 ぜひ、一度行ってご覧になることをお勧めする。近くには草湯温泉、沓掛温
泉、田沢温泉などひなびた温泉もあって楽しめる。
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 最初に取材で行って以来、二度三度と訪ねているが、行く度に新しい魅力の
発見がある。今は車でも直接神社まで行けるようになったが、修那羅峠の駐車
場から鳥居をくぐって800メートルほどの参道の山道は、谷をわたる風も心
地よい。
 石像にま新しい赤い前掛けがかけられ、保育園児らしいかわいい願いごとが
書いてあったりしてほほえましい。また、時には新しいお地蔵さんが仲間に増
えていたりする。
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 修那羅取材記(グラフ編 by UNCLE TELL)
 http://www.cybertown.co.jp/~uncle/shonara.html
 
 修那羅の石仏を解説したホームページ(yosikatuさんの「石の仏」)を紹介
 http://www1.kcn.ne.jp/~yosikatu/syonara.htm
 同アクセス図
 http://www1.kcn.ne.jp/~yosikatu/naganomap.htm
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