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「クラシック炉辺夜話」 2013/05/15(毎月1・15日発行)
クラシックの音楽家や作品のエピソードを中心に読みものとしても
ポピュラーな話題をお送りします。
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ベートーヴェンの父、ヨハン・ヴァン・ベートーヴェン(1740~1792)
・その3
ベートーヴェンは、自分は1772年生まれだと思い込んでいた。しかしほんとうは
生まれた日は確定されていないものの、その2年前の1770年12月。 しかしベート
ーヴェンは生涯、 自分は1772年生まれであると信じ込んでいた。友人が洗礼証
明証の写しを何度も見せたが、 それを認めようとしなかったという。ベートーヴェン
の生きた期間、日本の人物になぞらえると7つ年上だが、信州の生んだ俳人・小林
一茶(1763~1828)の生涯に重なるのである。
罪な父親のヨハンである。 この子は将来、脈がある、ものになりそうだと踏んだ
ものこころ付くか付かない内から、 1770年生まれだと吹きこんだのだろう。成人し
たベートヴェンも、決してそれを疑うことはなかった。
厳しい練習の甲斐あって、ベートーヴェンの演奏の腕もめきめき上達、7歳を少
し過ぎた頃、ヨハンは息子を公開演奏にデビューさせる。1778年3月26日にケル
ンで行われた演奏会である。演奏会予告には、弟子の宮廷コントラルト歌手アー
ヴェルドンク嬢と並んで「当年6歳の子息を世に送り出す」とあった。 むろん、神童
がもてはやされていた時代風潮の中にあって、7歳3ケ月になっていた息子の年
齢を一歳若くすることにより、 世間に天才少年として印象づける策略であった。
いわば第2のモーツアルト、 「2匹目のどじょう」をねらっての仕掛けだった。なお、
当日演奏した曲目、「クラヴィーア協奏曲とトリオを数曲演奏する」と予告にあるだ
けで、実際に演奏された作品が何であったかはわかっていない。
UNCLE TELL
ベートーヴェンは、4歳の頃から父親にピアノとヴァイオリンの手ほどきを受けたと
考えられる。 音楽家に生まれた子どもには自然のなりゆき、ベートーヴェンに最初
に音楽を教えた先生は父ヨハンだったわけである。
父ヨハンのやり方は、大変厳しいスパルタ式教育。ベートーヴェンが踏み台の上
に立って(座ってではない、それほどまだ小さい!)、泣きながら演奏しているのを
見たという証言もあるとか。父が子を練習させるためにベートーヴェンを叩いたり、
地下室に閉じこめたりすることさえあったといわれる。 良く語られるエピーソードに
夜遅く酔っぱらって帰って来たヨハンが、寝ているベートーヴェンを叩き起こして、
むりやりにピアノの練習をさせるということも。
またのヨハンは、練習におけるベートーヴェンの自発性を認めず、自分の考える
指導法からはずれないようわが子をコントロールしようとしたとされる。 次のような
話が伝えられている。
あるとき、ベートーヴェンが楽譜を見ず、即興的に演奏し、父親に「これ、なかなか
いいでしょう!」と言ったところ、ヨハンは「お前が自分だけで作るなんて、ま だそん
なことをするんじゃない。今のお前にはそんなことをさせたくない。まだそれには早い
からだ。」と答えたといわれる。
当時は、良い即興演奏が出来ることが優秀な音楽家の条件だったといわれるか
ら、本来ならその芽を伸ばしより良い即興演奏が出来るよう指導することもありえた
が、ヨハンはそれをしなかった。
ベートーヴェン研究家・伝記学者のメイナード・ソロモン(1930~・アメリカ)
は、こうしたヨハンの態度について、 わが子を有能な音楽家にするのが目的だったもの
の、一方では息子が自分を追い越さないように上達を抑えていたとも考えられる、と書
いているとか。これは、 自分が父(ベートーヴェンの祖父)をどうしても越えられなか
ったくぐもった気持ちの裏返しか。
モーツアルトの最初のころの作品は、即興的に弾いた曲を父レオポルドが楽譜に
書き留めたものという。ヨハンがモーツアルトの父と同じように即興演奏を否定せず
それを記録していてくれたら、後世のわれわれは、ベートーヴェンのより早い時期の
作品に接することが出来たかもしれない。
UNCLE TELL
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