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UNCLE'S
クラシック炉辺夜話 2009/06/15(毎月1・15日発行)
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クラシックの音楽家や作品のエピソードを中心に読みものとしても
ポピュラーな話題をお送りします
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ウェーバーとベートヴェンの会見
ドイツはシュトゥットガルト生まれの作曲家ジュリアス・ベネディクト(1
804〜1885)がウィーンでのウェーバーとベートヴェンの会見記を残し
ている。ベネディクトの作曲家としての軌跡はわからないが、フンメルやウェ
ーバーを師としたらしい。
カール・マリア・ウェーバー(1786〜1826)は、オペラ「摩弾の射
手」「オベロン」や管弦楽曲「舞踏への勧誘」の作曲家として有名、未完のも
のを含めると10作にものぼるオペラを書いたが、今は一般にはそれ以外はな
かなか聴く機会がないのではないだろうか。私もこの夜話で彼のクラリネット
五重奏曲を前に紹介したことがあるが、かなり専門性の高い音楽之友社の「名
曲解説全集・室内楽曲編」にウェーバーは載っていない。
ドイツ国民オペラの金字塔といわれる「魔弾の射手」を、1820年(34
才)に3年を費やして書き上げ、翌年ベルリンで初演、圧倒的な成功を勝ち得
た。1823年、37才になったウェーバーは、ウィーン郊外バーデンの住居
に53才のベートーヴェンを訪問した。私の種本の一つ、1937年発行の眞
條俊雄著「音楽家列傳」(東洋図書)のウェーバーの項にその模様が載ってい
たので、そのあらましを紹介しよう。
入室して、巨匠の居室とは思えないあまりに荒涼としたさまにウェーバーは
先ず驚いた。ありとあらゆるものが無秩序に室内に散らばっている。すなわち、
楽譜はもとより、コイン、衣類まで床の上に散乱し、テーブルの上には欠けた
コーヒーカップがあり、ピアノは開けっ放しのまま、それも幾筋も弦の切れた
のが見え、ベットなどは取り散らかして整頓したことなどないように見えた。
どこを見ても塵や埃にまみれて、これでも毎日住んでいるのかと疑うほどの光
景である。ましてや客人を迎えるたたずまいとはとても...。
ベートーヴェンは、古い擦り切れたガウンを上に着て、落ち着きすましてい
たが、ウェーバーが部屋に入るとすぐ認め、やおら近づくと、大きな声で「お
お、来たかと..」抱擁するのだった。間をおいて、ベートーヴェンの手振り
を混ぜたおしゃべりが始まった。先ず、自分の現在の境遇、次に世間や劇場の
ことからイタリア歌劇に関する所見、最後に困った存在の甥カールのことなど、
いろいろと話しが弾んでいく。ウェーバーも相づちを打ったり、同情したり.
..、ウェーバーも巨匠とこんなにも親しく話しが出来たことに大いに感激す
るのだった。
ウェーバーがベートーヴェンの境遇に同情し、ウィーンを離れドイツやイギ
リスに移住すれば、一層有意義に生活も出来るのではと提案説得したが、ベー
トーヴェンは自分の耳を示しながらかぶりをふり、「せっかくだが、それには
もはや余りに遅い」からと話しを打ち切った。
それからベートーヴェンはウェーバーの手をとってなじみのホテルのレスト
ランに向かうのだった。そこで、時の移るのも忘れ芸術論に花を咲かせた。そ
の間、2回も3回もウェーバーを抱き、なかなか離れようとしないほど親愛の
情と喜びを示していたが、いよいよ別れることになると、「君の新歌劇の成功
を祈っている。行けたら自分は第一夜に拝見することにしよう。」と熱く激励
するのだった。しかし、二人はその夜以後永遠に会うことはなかった。そして
3、4年の内に相次いで世を去るのある。
UNCLE TELL
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