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「クラシック炉辺夜話」 2009/03/15(毎月1・15日発行)
クラシックの音楽家や作品のエピソードを中心に読みものとしても
ポピュラーな話題をお送りします。
http://uncletel1.ne.jp
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未完成交響楽!?
未完成交響曲でなく交響楽である。『未完成交響楽』は、4/3世紀も前の1
933年(昭和8年)に封切りさたドイツ・オーストリア合作映画。シューベル
トの悲恋を扱った伝記映画である。音楽家を主人公とした映画では、最も古い作
品でなないかともいわれるもので、これまで何回かリバイバル上映されてきた不
朽の名作というが、私もなんとか見てみたいと願い、何年かレンタルショップな
ど探してきたが、未だその思いを果たしていない。改めてネットで検索したら、
なんとちょっと値ははるがAmazonなどで購入出来るようだ。
この夜話でも既に何回か紹介したとおり、恋多かったベートーヴェンに比べ、
シューベルトには表に出た浮いた恋物語などほとんどないのでは...。この伝
記映画『田園交響楽』にしても、史実の忠実な再現でなく、物語性の強い内容に
なっているようだ。では、「名曲とっておきの話」(宮本英世著・音楽之友社)
やネットの解説ページから、おおまかなあらすじを紹介して見よう。
映画は名曲『未完成交響曲』のメロディにのせて、シューベルトと二人のロマ
ンスが描かれる。音楽と映像がみごとに溶け合い、封切り以来日本での評価は高
かったという。ソプラノ歌手エゲルトの美しい歌声も魅力。
19世紀初期のウィーン、市井の貧しい作曲家シューベルトは、気持ちはおお
らかで豊ではあったが、いつも懐はピーピー、質屋通いに愛用のギターを手離す
ほど。質屋の娘エムミーは、この若い音楽家に好意を寄せ、彼に一銭でも多く貸
し与えようと心を砕いていた。ゲーテの詩集をシューベルトに貸したのも彼女で
あった。
その頃、シューベルトは作曲を続けながら、小学校で教鞭をとっていた。ある
日、ウィーン社交界に今を時めくキンスキー侯爵邸での行われる音楽会に出演を
求められた。エムミーが、父の目をかすめて取り揃えてくれた晴衣を身にまとい、
若い音楽家にとって出世の登竜門ともいうべきこの音楽会で、シューベルトは新
作のロ短調交響楽をで弾いたのである。
そして演奏がまさにクライマックスにさしかかった時、突然一人の令嬢が笑い
声を上げる。この若い女は外の事で笑ったのであったが、この不作法な振舞いに
芸術家の誇りを傷つけら、冒涜されたと感じたシューベルトは憤然と、ピアノを
閉じ邸外へ飛び出してしまう。
やがてハンガリアのエステルハーツィ伯爵からの音楽教師にと招きがあり、行
って見ると、二人の娘の姉の方は、かつて彼を笑声で乱したあの夜の令嬢であっ
た。名はカロリーネといった。彼女はかつての無礼をシューベルトに詫びるため
に彼を招いたのであるが、その後、日が経つにつれこの二人の間に恋が芽生え、
やがて結婚を約束をするに至る。あとは父親である伯爵の許可だけ、とひとまず
シューベルトはウイーンに戻る。しかし伯爵はこの二人の恋を許さなかった。
カロリーネからの便りがない日が続いた或る日、彼にハンガリアへ直ぐ来てほ
しいと旨の手紙を受け取った。シューベルトが取るものも取りあえずに馳けつけ
た時に、そこに彼を待っていたのはカロリーネと他の士官との結婚式であった。
シューベルトを愛しながら、父親のすすめる結婚に従わざる得なかった姉のため
に、手紙は妹が出したのだった。その夜、シューベルトは、絶望感にとらわれな
がらも、彼女の婚礼を祝って彼が完成したばかりのロ短調交響楽を人々の前で弾
いた。
それを聴きながらカロリーネはさまざまな思いに胸をつまらせる。激しい悔悟
と慟哭と涙で演奏を遮ると、どうか自分を諦め芸術に生きてほしいと、せつない
悲痛な心情を吐露し、あふれる涙のまま隣室へ駆け去ってしまう。シューベルト
は完成させた交響楽の終りの数頁を破り取り、その余白にこう書いた。「わが恋
の終わらざる如く、この曲もまた終わらざるべし」。
ところで、映画ファン、音楽ファンの中には、映画のストリーがほんとうだと
信じる人がいるかもしれないが、これはあくまでフィクション。シューベルトが
名歌手カロリーネ・ウンガー(夜話09.01.15、ベートーヴェンのミサ・
ソレムニスと第九シンフォニーのソロパートを受け持った)の父親によってエス
テルハーツィ伯爵に紹介され、伯爵家の音楽教師として雇われたこと、そして令
嬢のカロリーネとロマンスの花を咲かせたのは事実らしい。しかし年代的にみる
と音楽教師になったのは1818年(21歳)、恋愛をしたのは、ずっと後年の
1824年(27歳)だったというのである。
UNCLE TELL
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